俺は先生より、自分の練習動画を信用していた

競技ダンスをやっていた頃、俺はほぼ毎回練習動画を撮っていた。自分が気持ちよく踊れたかより、外からどう見えていたかを確認したかったからです。
踊っている最中の「できた」は、あまり信用できない
踊っている本人は、今の動きは良かったと思う。ところが動画を見ると、普通にダサい。なんなら昨日と変わっていない。
競技ダンスは、自分の体感を採点する競技ではない。ジャッジが外から見る。なら、俺の中で気持ちよかったかより、外からどう見えたかの方が重要になる。
もちろん、感覚は必要です。ただ、感覚だけで「できた」と判定すると、都合のいい採点になりやすい。動画はそこに一切気を遣わない。
先生の言葉を、そのまま正解にはしなかった
レッスンは大事だった。でも「先生が言ったから正解」で終わらせたくなかった。
先生に言われる。試す。動画を撮る。本当に良くなったかを見る。良くなれば採用する。違うなら、どこが違うのかをまた考える。
先生を信用していないという話ではない。言葉を結果まで確認したかっただけです。ダンスの指導には「もっと伸びて」「もっと大きく」みたいな表現も多い。そこで止まると、次の練習で何を直すのかが分からない。
「もっと」を、直せる単位まで小さくする
ワルツなら、最初の一歩で身体が移動しているか。回転を早く始めていないか。二人の距離は変わっていないか。ナチュラルターンで止まっていないか。
こうやって分けると、ただ「今日のワルツは微妙だった」で終わらない。次に見る場所が決まる。
俺の場合、練習量は多かった。週5〜6日、1日5〜6時間くらい踊っていた時期もある。でも、時間が長いほど、テーマを決めないと疲れただけで終わる。
一回の練習で直すのは、多くても3つ
動画を見ると、悪いところはいくらでも見つかる。ホールド、足、膝、頭、回転、タイミング、移動量、パートナーとの距離。全部直そうとすると普通に無理です。
だから、その日のテーマを絞る。今日は移動とタイミング。次は距離と回転。少しずつ変化を撮る。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 撮る | 同じ種目・同じ方向から撮り、感覚ではなく動いた結果を残す。 |
| 見る | その日のうちに見返し、気になった点を無制限に増やさず絞る。 |
| 分ける | 移動、回転、タイミング、二人の距離など、修正できる単位にする。 |
| 試す | 次の練習では多くても3項目に集中し、変化をもう一度撮る。 |
全国優勝より、勝てなかった頃の方が今は使える
俺は大学最後に冬全のワルツを優勝した。これは普通に誇らしい。
でも、今振り返って役に立つのは、全国優勝の結果そのものより、そこへ行く前に予選落ちしていた時期のことだったりする。経験者なのに勝てない。練習量はあるのに順位が上がらない。そこで「もっと頑張ろう」だけを続けると、間違った方向へ速く進む。
成功した話は、そのまま真似できない。体格もパートナーも時代も違う。でも、動画を撮らない、原因を言葉にしない、先生に言われたことだけをやる、という失敗は誰でも起こる。
今の俺が昔の自分に言うなら
「もっと頑張れ」ではない。
「お前かなり頑張ってるから、一回やり方を疑え」です。
5時間練習しても、5時間分うまくなるわけではない。間違った練習を5時間続けたら、1時間間違う人より速く間違えるだけです。
だから、次に踊るならまず撮る。見て、分けて、3つだけ直す。俺が競技ダンスで最後まで手放さなかったのは、たぶんこのやり方だった。